コウジカビ(黄麹カビ)
清酒製造に使われる微生物の一つにコウジカビ(以下、麹菌)が使われます。
正確には「麹菌」ではなく麹菌の生成する「糖化酵素」が必要になります。
米麹を造るには麹菌の活動が不可欠ですが、麹菌の活動に必要な条件は以下の3つ
・0℃~40℃の間であること
・水があること(氷や蒸気でない)
・呼吸ができること(酸素があること)
麹菌は生育に水を必要とするので、0℃以下の環境で水か氷になってしまうと生育できない。
40℃以上になってしまうと、麹菌を構成しているタンパク質が破壊されてしまうため、麹菌も死滅してしまう。
麹菌は偏性好気性菌と呼ばれる代謝能力をもつ菌で、酸素のあるところでしか活動できない。
これらの条件が揃うと、水分の多いところへ住み着いて、水分を探しながら菌糸を伸ばして増殖を続けます。
麹菌のエネルギー源であるブドウ糖が少ないときは、糖化酵素を生成し近場の多糖類を単糖類(ブドウ糖)へ分解して利用します。
この性質を清酒造りにあてはめると、蒸して程よく冷ました米は、
・温度は麹菌の適温を人が調整しながら保温管理するので問題なし
・水は蒸す前に米に水を吸わせているのでこれを利用する
・酸素は水中ではないのでこれも問題なし
と麹菌が活動しやすい環境が揃えられています。
麹菌が米に住み着くと肉眼では白い斑点として現れ、これを「破精(はぜ)」と呼びます。
破清という拠点を作ると、麹菌は早速糖化酵素を生成します。糖化酵素が近場の米に含まれる多糖類(デンプン)を単糖類(ブドウ糖)に分解し、麹菌はブドウ糖をエネルギー源としながら菌糸を延ばして増殖先を探します。
手っ取り早く米の表面から別の米の表面へと菌糸を伸ばそうとしますが、くっついて固まりになってしまうと酒造りに支障が出るので1粒1粒パラパラな状態にほぐします(切り返し)。
しばらくすると菌糸は米の内部へ入り込むようになります。これを「破精込み」と呼び、米の内部のデンプンも糖化酵素で分解されるようになります。